15歳以上の猫のうち、8割以上がかかっていたとも報告されている「慢性腎臓病」。(※注1)
現状、猫でも人でも腎機能が低下すると、元の状態に戻すことはできないようです。
その病気に対抗しうる「AIM」というタンパク質を利用した、新しい治療薬(AIM薬)の開発が進められています。
今回はAIM薬の開発について、分かる範囲で進捗状況をまとめてみました。
※AIMについての詳細は「猫が30歳まで生きる日」(書籍)に書かれています。
もしくは、以前まとめたレビュー記事をご覧ください。
↓レビュー記事はこちら🐾↓
↓猫の腎臓病の原因や、「AIM」について書かれた本はこちら🐾↓

参考
注1)Marino CL, J Feline Med Surg 2014
AIM治療薬は、どんなもの?治療回数や値段について

2024年の時点で、ほぼAIM治療薬は完成しているということです。
治療方法
イベントセミナーで聞いた話では
- 「注射薬」として、猫ちゃんに直接注射するようになるだろう
- まずは一部の動物病院で、治療を受けられるよう進めていく
- ゆくゆくは多くの病院で治療できるよう広めていきたい
ということでした。
治療回数はどれくらい?
病気の症状と進行具合によって、注射の量や間隔は変わってくるようです。
少なくとも、毎日・毎週といった短期間で打ち続けるものではないとのこと。

将来、それぞれの猫たちに合った腎臓病の治療ができるようになるのかな
値段はいくらになりそう?
製薬会社とタッグを組むことで、なるべく価格を抑える方向のようです。
1回の注射で1万円いかないくらいにしたい、とイベントでも話されていました。
将来的に、数十万といった価格帯にはならないようです。
保険に入ってない限り、治療費は全額自己負担だよね
毎回高額じゃないのはありがたい…

猫の身体に安全?副作用や危険はあるの?
猫の腎臓が悪くなったとき、タンパク質・ナトリウム・リン等を制限した、療法食に切り替えることが多いと思います。
AIM治療薬は、もともと身体の中にある「タンパク質」を利用するため、副作用が起きる可能性は低いようです。
注意が必要なのは、「タンパク質にアレルギーがあるかもしれない猫ちゃん」。(※注2)
治療前に調べることができるため、不安な場合は獣医師に相談することになるでしょう。
参考
注2)フェリシモ「猫部」,第22回 宮崎徹先生とトークイベント・後編,https://www.nekobu.com/blog/2023/03/22-4.html,2024年3月18日付
AIM治療薬の開発は、どのくらい進んでいるの?

今後のAIM治療薬の進捗について、まとめてみました。
追記:2025年2月時点
治験前の調査として、条件に合った猫ちゃんの「血液検査」への参加募集が始まりました!
基本条件として、【10歳以上で、過去に「慢性腎臓病」と診断されたことのある猫さん】が対象です。
また、採血を受けられる病院の所在地も発表されています。
(住んでいる地域にあわせて、指定された病院で採血するようです)
公式サイトをよく確認してから、調査へ参加するか考えてみると良いでしょう。
昨日お知らせしました、慢性腎臓病の猫の血液検査(調査)の詳細とお申込みについては、こちらをご覧ください(https://t.co/oN77ffhL8J)。たくさんの皆様のご参加・ご協力をお待ちしております!#iamcat
— Toru Miyazaki/宮崎徹 (@Toru51557911) February 3, 2025
- 2024〜2025年
- 非臨床試験 開始
- ※2024年6月18日時点で、宮崎所長のX(旧Twitter)より「非臨床試験が始まった」とポストあり。
- 治験前段階 調査の募集開始(2025年2月~3月)
- ※2025年2月2日時点、宮崎所長のX(旧Twitter)より「血液検査」の参加猫さん募集あり。
- 臨床試験(猫への治験)
※治験参加への募集があるかも。
- 非臨床試験 開始
- 2026年〜
- 医薬品の承認・審査(農林水産省)
- 2027年〜
- 承認・上市(医薬品として販売)
AIM治療薬に期待できること

まず「予防」として取り入れる
現在は、猫のAIM機能をサポートする成分が入ったフード(総合栄養食)・サプリメント・スナックが販売されています。
特に持病がない猫ちゃんには、「腎臓病の予防」に普段の食事として、与えてみるのも良いでしょう。

マルカンから出ている「AIM30」シリーズの製品は、手に入りやすいね
わたし、AIM30の「11歳以上の室内避妊・去勢後猫用(チキン味)」を混ぜたごはんを食べてるわ

獣医師の指導で療法食にしている場合は、急に切り替えたりせず
- 療法食に少しずつ混ぜて与える
- おやつやトッピングとして使う
など、注意は必要です。
AIM薬(注射薬)が使えるようになったら
獣医師の判断のもと、腎臓病の症状や重症度に合わせて、定期的に注射をして治療することになりそうです。
週に何度も、緩和ケアのために病院へ行くことが無くなれば、猫ちゃんへの負担も抑えられそうですね。
週に何回も通院するのは大変…!
病院に行くこと自体、怖くてストレスな猫にとっては嬉しいね

おわりに

腎臓の機能が悪くなっていき、弱っていく愛猫の姿を見て、「苦しさを和らげてあげたい」と思うのは自然なことです。
待望の治療薬が実現するまで、あと少し。
愛猫家の想いを「薬」というカタチにすべく、動いている全ての方たちに感謝をしつつ。
続報を楽しみに待ちたいと思います。